エネルギー・環境

最新の情報通信技術(ICT)をはじめとした革新的なテクノロジーを駆使して実現される快適で便利な持続可能な社会、スマートシティ、スマートコミュニティの実現に向けて、関連する分野においてそれぞれ進められている研究・開発、実証実験など、実用化に向けたさまざまな取り組みを総合的に発信していきます。
2014/03/23

【サントリー天然水の森シリーズ】第1章 水源地域の未来が都市の運命を決める

「河川流域」の視点で街づくりを考える

都市や地域だけの取組で持続可能な社会は作れない

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、未来都市実現への期待が高まっている。6年後の東京では、世界の最新テクノロジーと日本の技術力の粋を結集して、世界の手本となる都市の姿を披露できるかもしれない。そんな機運がいっそう高まっている。
 2011年の東日本大震災発生以降、これからの街づくりについて、被災地だけではなく全国の都市や地域で、防災対策の在り方やエネルギー利用の在り方を中心とした議論が加速し、産学官民が一体となった実証事業や実証実験が活発に行われるようになった。それが、「スマートシティ」や「スマートコミュニティ」の実現への取組である。

 スマートシティおよびスマートコミュニティの理念は、最新のICT(情報通信技術)とビッグデータを、ブロードバンドネットワークを介して利活用することで、快適・便利で安心・安全な持続可能な社会を、都市や地域で実現するというものだ。都市や地域での個別の取り組みに加えて、都市や地域が相互に連携する広域の取組も進められている。
 これらの取組に共通するのは、大勢の人が集まる場所で進められていることだ。つまり、経済活動が活発でヒト、モノ、カネが集まっている場所を、より豊かにしようという取組が脚光を浴びているといえる。しかし、スマートシティやスマートコミュニティへの取組が活発な都市や地域だけでは、持続可能な社会は実現できない。

サプライチェーンを意識する

 日常的に営まれているビジネスを思い浮かべてほしい。例えば、今着ている洋服は、どのようにして手元に届いたのか。材料を調達して繊維を作り、その繊維から布を織る。布から型を切り出して縫製し、洋服が出来上がる。出来上がった洋服は問屋に販売され、小売店に卸されて、小売店の店頭で消費者の手に渡る。
 家電製品や自動車も、消費者の手に届くまでに多くの工程を経る。そして、これらの一連の工程は、それぞれの工程を専門の企業が分担し、物流を介して連携する。出来上がった製品は、流通を介して消費者に届けられる。
 ビジネスではこれら一連の工程をサプライチェーンといい、これらの管理をSCM(サプライチェーンマネジメント)という。都市づくり、地域づくり、そして街づくりにも、当然サプライチェーンが存在し、それらの管理、すなわちSCMが不可欠なのだ。
 有名な話であるが、自動車メーカーの工場の生産ラインに部品が届かないと、生産が止まってしまう。洪水や豪雪などの災害で物流が止まってしまうと、工場も小売店も稼働できなくなる。モノとカネが動かなくなってしまい、社会の機能がマヒしてしまう。これと同じことが、都市や地域にもいえるのだ。

貴重なエネルギーは電気と石油だけではない

 日常生活や産業を持続させるには、エネルギーが不可欠であることはいうまでもない。では、エネルギーとは何か。真っ先に思い浮かぶのは、電気や石油だろう。もちろん、電気や石油は不可欠だ。ただし、電気と石油があれば、家庭も工場も物流も成り立つのだろうか。
 わかりやすい例を挙げると、家庭を維持するには食料が必要だ。その食料を作り出すには水が不可欠であるし、家庭にきれいな水がなければ生活は成り立たない。これは、工場における製品の生産においても同様だ。
 エネルギーの効率的な利用やエネルギーの再生利用の重要性が声高に叫ばれている中で、水というエネルギーの重要性については見落とされているように思う。
 水も日常生活や食料、産業の持続を支えているのだ。ただし、水はそれ単独で存在しているわけではない。都市や地域に降り注ぐ雨も、もちろん貴重な水資源であるが、食料を育む水、飲料水などの生活を支えている水や産業を支えている水は、河川が供給している。
 河川を流れる水は、都市や地域から遠く離れた山の奥の源流から流れてくる。その源流から湧き出す湧水は、源流域の森林が育んだ地下水である。地下水は、山に降り注ぐ雨や雪解け水が森林の土壌に浸み込み、ろ過されて作り出される。これは、涵養(かんよう)と呼ばれる自然の営みだ。源流に湧き出した地下水は河川となって海に流れ込み、そして海水が蒸発して雲となり、山に雨や雪を降らす。

水を生み出す源流域の森林が危ない

 経済や産業が発展する都市や地域は、河川の中・下流域の平野で形成される。そこで利用される水は、その河川の上流にある源流から供給される。つまり、源流域と中・下流域は、河川というネットワークでつながっているのだ。そのため、源流域で生じている問題は、そのまま中・下流域に影響を与える。
 先ほどの水の循環も河川流域の関係も、都市や地域におけるサプライチェーンといえる。そして、これからの都市や地域の維持・発展には、そこでの生活や産業を支えるエネルギーの一つである水の源、地下水を守ることが不可欠なのだ。
 今、地下水を育む源流域の森林では、深刻な問題が数多く生じているという。源流域の森林の問題は、下流の都市や地域を直撃する。住んでいる都市や地域や、仕事をしている都市や地域に流れる河川の源流域の森林で、今何が起こっているのか。都市、地域の単位に加えて、「河川流域」の視点で街づくりを進めるべきではないだろうか。

(リポート:レビューマガジン社・下地孝雄)
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