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最新の情報通信技術(ICT)をはじめとした革新的なテクノロジーを駆使して実現される快適で便利な持続可能な社会、スマートシティ、スマートコミュニティの実現に向けて、関連する分野においてそれぞれ進められている研究・開発、実証実験など、実用化に向けたさまざまな取り組みを総合的に発信していきます。
2014/02/22

“何度も繰り返して読み上げを聞ける”をICTツールで支援

『ディスレクシアプログラム』実践事例研究紹介
鳥取県安来市立赤江小学校
井上賞子 先生

ICTを活用して障害児の学習・生活支援を行うプロジェクト
「DO-IT School」の成果報告会リポート
“何度も繰り返して読み上げを聞ける”をICTツールで支援

 指導を担当する男子児童の課題について、小学生の読み書き能力検査ツーツ、「URAWSS」(ウラウス:Understanding Reading and Writing Skills of Schoolchildren)の読み課題は、速度が39字で評価はBであったが、内容理解は半分間違っていた。つまり、読めているように見えているが、きちんと読めていないのが実情だ。
 そのため、正解を答えられる問題であっても、設問を正しく読めないことが原因で不正解となってしまうことが多がったという。

Wordの読み上げソフト「和太鼓 Wardaico」

 そこで、読みを補うツールとしてマルチメディアデイジー教科書と、Wordの読み上げソフト「和太鼓 Wardaico」、PowerPoint文書への音声データ(井上先生の読み上げを録音したもの)の貼り付けなどを利用した。
 書くことを補うツールには、音声認識ソフト「AmiVoice」(アミボイス)を用いた音声入力のほかに、キーボード入力、手書き入力を利用した。
 そしてこれらのツールを国語の教科書を読むとき、テストやプリントに回答するとき、日記や自作の図鑑を作成するときなど、用途に応じて使い分けた。

テストやプリントを1人でもスムーズに回答

 特に、PowerPoint文書への音声データの貼り付けについては、テストやプリントと同じビジュアルに設問と同じ音声データを貼り付けることで、ビジュアルをタッチするだけで必要に応じて音声が再生されるため、テストやプリントを1人でもスムーズに回答できるようになったという効果が見られたという。その具体的な成果が次の画面だ。
 1回目、2回目の緑の線は、ICTツールによる支援を使わず1人で取り組んだときの得点だ。そして、1回目と2回目の同じテストを担任に読み上げてもらって回答したのが紺色の得点である。さらに、3回目からは読み上げ音声のデータの貼り付けたPowerPoint文書を利用したときの得点となる。なお、満点は100点ではなく150点のテストであった。
 担任が読み上げるのに対して音声データを用いた場合の得点が高いことについて井上先生は、「音声データならば回答が難しい箇所に画面をタッチするだけで、しかも気兼ねなく何度も繰り返して読み上げさせることができる」ことが効果につながったと分析する。
 さらに、当初はテストやプリントに回答する方法として音声入力や手書き入力の活用も検討していた。
 しかし、文章を見て書くことはできても覚えることができないため、テストやプリントの回答には音声入力は向いていなかった。一方で、日記などでは書きたいことを自分でイメージできるため、音声入力の効果が得られたという。
 井上先生も報告している通り、ICTツールの効果は、児童生徒それぞれの困難の場面に応じた支援方法を検討して活用することで得られるのだ。

(リポート:レビューマガジン社・下地孝雄)
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