生活・医療・福祉

最新の情報通信技術(ICT)をはじめとした革新的なテクノロジーを駆使して実現される快適で便利な持続可能な社会、スマートシティ、スマートコミュニティの実現に向けて、関連する分野においてそれぞれ進められている研究・開発、実証実験など、実用化に向けたさまざまな取り組みを総合的に発信していきます。
2015/02/12

三島市のスマートウェルネスの取り組み

(右)
三島市 健康づくり課 健幸政策室
室長 柿島 淳 氏

(左)
三島市 健康づくり課 健幸政策室
土屋滋俊氏

東海道五十三次の五大宿場町の1つであり、富士、箱根、伊豆の玄関口として発展した静岡県三島市。三島市は、“健幸都市”の実現に向けたスマートウェルネスシティに注力している。スマートウェルネスシティは、少子高齢化や人口減少が進む中、高齢者が地域で元気に暮らせる社会を実現するために、健幸(=健康で幸せ)づくりを推進するプロジェクトだ。三島市をはじめとした全国の自治体が参画しており、各自治体の特色を生かした取り組みが進められている。

健幸づくりでポイントを取得

 三島市が取り組んでいる「スマートウェルネスみしま」は、従来は治療が中心であった医療を予防重視に移行すること、高齢者が楽しみながら社会に参加できる場所や機会を設けること、地域産業を食やスポーツによって活性化させることなどを意図している。  三島市は、スマートウェルネスみしまに関する2013〜2015年度の実行計画として27の事業を考案した。総合的な取り組みは、健幸マイレージ、モバイル機器を使った健幸街歩きなどが該当する。このほか、健康づくり、生きがい・絆づくり、地域活性化・産業振興などに関する事業も策定された。
 健幸マイレージは、ポイントカードを市民に配布する事業だ。ウォーキングなどの健幸づくりに関する活動をするとポイントがたまり、利用者はポイントに応じた景品を応募できる。カードは名刺サイズで財布などに入れて持ち運びができ、野菜などを抽選で取得できる。
 健幸マイレージの参加者は60〜79歳が最も多く、全体のおよそ半分を占めている。高齢者の外出支援という目的はある程度達成しているが、就労世代にも訴求していくために、2014年度は新たな景品として「学校応援コース」を用意した。
 三島市 健康づくり課 健幸政策室 土屋滋俊氏は、「従来は、個人がポイントを貯めて自分のために応募していました。学校応援コースは学校が使える寄付のようなポイント制度です。例えば、特定の小学校に応募すると1としてカウントされ、そのカウント数が多いほど、寄付額が増える仕組みです。寄付はPTAなどを援助する資金になり、学校間での競争やPTAに所属する就労世代への参加を促しています」と話す。

大学生と街歩きアプリを作成

 モバイル機器を使った健幸街歩きに関する事業も、地元の大学生と協力して進められており、スマートフォン用の街歩きアプリ「みしまぁるく」を共同で開発した。一般的なウォーキングアプリは、歩いた距離や消費カロリーの測定、グラフ表示などの機能を保持するケースが多い。また、観光客向けアプリは、その地域の観光名所などを地図上で案内する機能を保持しているが、みしまぁるくは両方の機能を統合させたアプリとなる。
 土屋氏は、「街歩きによる健康と地域の活性化の両面を融合させた新しいアプリを作るために、大学生の意見を参考にしました。市内の順天堂大学や日本大学などの学生達と協力して、健康と地域活性化につながるアプリを作るための意見を募り、約1年間かけて作成しました」と話す。
 学生からアプリに関するニーズを収集し、学生がよく訪れる店舗のベスト10のようなかたちで大学からアンケートを取り、オススメの店舗をアプリで紹介している。また、女子大生が本気で考えた「三島デートコース」、精神・肉体を鍛えたい人にオススメの「禅心鍛錬コース」など、オリジナルのウォーキングコースも3種類用意されており、ユーザーが楽しみながらウォーキングが行えるのだ。
 店舗を紹介する文章などの多くは学生が作成し、「冷蔵庫の味がするあずきアイス」など、辛口ながら味のある店舗紹介がなされている。ダウンロード数は現時点で3,500件以上と人気だ。

健幸視点で道路を整備

 三島市は、市民の健幸づくりを実現するために、個人の健康状態などの分析によって市民の健康課題を把握することを目指している。例えば、科学的根拠に基づく個別健康支援プログラム(筑波大学 久野教授 作成)を活用し、個別の運動を行う教室を展開。その効果を見える化できるという。
 また、スマートウェルネスでは歩くことを通じた健幸づくりを意図しているが、特に三島市などの小さい街では散策を通じていろいろな人と出会う機会が多い。三島市は、こうした触れ合いや絆づくりを意図した街づくりを推進している。
 例えば道路整備について、国が各自治体に策定を促している道路構造条例において、三島市は「歩車共存道」の概念を条例の中に取り入れ、歩きやすい歩行環境の整備を進めている。歩車共存道とは、歩行者や自転車の安全な通行を確保するため、自動車の速度または交通を抑制する措置などを講じた道路を指す。
 2013年度には、歩車共存道に関する事前調査を実施し、危険な個所や通学路、地元の要望などをもとに、モデル地区の選定を行った。2014年度には、市内の寿町や広小路町などをまたがる700〜800mの道路を歩車共存道として整備するため、地元の自治会や町内会と歩車共存道づくりの方向性などを意見交換した。今後も、健幸の視点で道路整備を進めていくという。

出張型の健康診断で意識改革を促す

 健康に対して無関心な層への対策として、三島市は、不特定多数が集う店舗などに出向いて専用ブースを展開し、健康チェックや健診PR、健康相談を行う「出張!“健幸”鑑定団」を実施している。ブースを設置する主な場所は、温泉施設や信用金庫、スーパーなどだ。
 昨年の夏には、飲食店やカラオケ店などを展開している雄大グループとコラボし、居酒屋でも出張鑑定を実施した。健康と飲酒のミスマッチな点が話題になったという。また、雄大グループで使用できる1,000円分の金券を健診受診者にプレゼントする事業もコラボで実施している。雄大グループとしては、テレビなどのメディアで取り上げられるため知名度の向上が期待できるほか、市に対する地域貢献にもつながるのだ。
 保健センターなどに市民を集めて実施する診断は、診断を受けに来ない無関心層が必ず出てくる。そのため、無関心層のもとに出向いて診断し、健康に対する意識を変えてもらう取り組みは非常に有効だ。
 三島市では、花を通じてコミュニティを作り、美しく品格がある街を目指すガーデンシティプロジェクトが市民の協力のもとに推進されている。三島市 健康づくり課 健幸政策室 室長 柿島 淳氏は、「花は生き物であり、育てていく上で手がかかります。花には、花に触れることを通じたコミュニケーションなど、自然にコミュニティが生まれる特性があります。街中で市民に花を飾ってもらい、花の世話を通じたコミュニティづくりを推進しています」と説明する。
 花は水を与えるだけでは不十分で、適度に摘まなければ美しく育たない。これを市民がボランティアとして花摘みまで実施し、市内に花が増えてきているという。花によって街の景観が良くなるだけでなく、住民の美観に対する意識を醸成しながら、花を通じたコミュニティが生まれているのだ。

強固な連携が事業を加速

 三島市のスマートウェルネスに関する取り組みは、部署をまたいで進められている。例えば、健幸マイレージについて、ポイントの対象になるイベントは三島市の数多くの課が担当している。取り組みを進めるにあたり、各部署を取りまとめるのは相当な苦労があったのではないか。この質問に対して、土屋氏は以下のように答える。
 「確かに、取りまとめに関しては、他の自治体にもよく聞かれます。三島市がスムーズに事業が進められた要因は3つあります。まず、市長が掲げる3大政策にスマートウェルネスが含まれており、トップダウンで事業が進められているからです。また、行動計画を作成したことも大きいです。行動計画は、関係する課から職員を募って1年間かけて作成し、円滑に事業を進めていくためのキーマンとなる人員を各部署から召喚しました。もう1つは、三島市は、もともと横の連携を得意としている街であり、職員が自分の仕事だけに没頭するのではなく、一言声をかけるだけで連携できる素地があったことが要因です」
 土屋氏が話すように、三島市は“連携力”が強いという特長がある。昭和の時代、付近に石油コンビナートが建設される計画があったが、それを市民の団結力でストップさせた経緯があるのだ。団結して物事に取り組む下地があり、職員同士の連携や市民の積極的な参加などがスムーズに進んでいるのだ。
 今後のスマートウェルネスみしまの方向性として、あらゆる分野に健幸の視点を取り入れた新しい街づくりを推進していくという。市民の総参加で、健康づくりや生きがい・絆づくり、地域活性化・産業振興などの取り組みを広げていき、次世代を担う子どもたちの幸せづくりに生かしていく。

(リポート:レビューマガジン社・笠間洋介)
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