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2014/02/22

沖縄におけるEVを活用した観光の取組について

琉球大学 観光産業科学部
教授 学長補佐
下地芳郎 氏

【EV・PHV】<イベント>EV・PHVタウンシンポジウム─in 沖縄─
「沖縄におけるEVを活用した観光の取組について」

リピーター率80%にだまされない沖縄観光産業のビジネスチャンス

 琉球大学の下地教授は、2013年まで沖縄県庁でEVの普及に取り組んできた。沖縄県におけるEV普及の重要性について、「環境に優しい観光地としてのイメージアップと他の観光地との差別化に貢献する」と強調する。
 観光産業は沖縄県の基幹産業であるが、これまで順調に観光客数の増加が続いてきた。そして、2013年は過去最高の641万人に達した。
 しかし、観光客を精査するとまだまだ成長の余地があると指摘する。下地教授は、「600万人という大きな数字ではなく身近な数字で、どのような人が来ているのかを知ることが大事。例えば、1日あたりの滞在者数を考えた場合、季節変動を加味して6〜9万人と試算できる」と説明する。
 この6〜9万人をさらに精査すると、2012年時点で約82%がリピーターだという。しかし、この数字を単純に捕らえてはいけない。下地教授は、「リピーターが80%以上と聞くと、沖縄県の観光産業は成熟していると誤解している人が多い。リピーターを細かく分類すると、3年以内の再訪率は50%程度。初めての来訪客の増加はもちろんのこと、リピートの頻度を短くすることで、まだまだ成長の余地がある」と強調する。

2020年までに観光客数1000万人、観光収入1兆円を目標

 沖縄県にとって2020年までの6年間は貴重な期間になるという。なぜなら、2020年は東京オリンピックの開催だけではなく、那覇空港の第二滑走路の供用が開始されるからだ。また、2014年2月17日には那覇空港新国際線旅客ターミナルビルの供用開始のほか、同年3月には那覇港に旅客船ターミナルビルが完成する予定だ。
 さらに、2015年は戦後70周年と沖縄国際海洋博覧会40周年を迎えるなど、観光客への利便性向上や話題性の提供による観光客増加が期待される。沖縄県が掲げる「沖縄21世紀ビジョン」の「世界水準の観光リゾート地」の中で、観光客数1000万人、観光収入1兆円を目標としている。

 しかし、観光地としての魅力と「沖縄」のブランド力が国内外で保持・発揮されなければ観光客の増加はない。そこで、リゾート地としての品質保持・向上とともに、沖縄県ならではの自然環境を独自の観光価値としてアピールすることで、国内外の観光客を誘致する狙いだ。ただし、自然環境の保全に配慮しなければ持続可能な観光産業は成り立たないうえ、沖縄のブランド力も低下してしまう。その課題の解決に貢献するのが、沖縄県でのEVやPHVの普及というわけだ。

EV・PHVの普及促進で観光資源である自然環境を保全する

 EVやPHVを県民に普及させるだけではなく、レンタカーにも導入して自然環境への配慮をアピールするとともに、実際の環境負荷を低減して持続可能な観光産業を実現する筋書きだ。
 沖縄県では、「エコリゾートアイランド沖縄推進事業」を通じて、50台のEV導入と20カ所の普通充電設備設置を支援してきた。しかし、ガス欠ならぬ電欠への不安や、軽自動車やコンパクトカーと比較して車体価格が高いことから普及はしていないのが実情だ。
 下地教授は、「沖縄県の観光産業の成長において、EVやPHVの普及はとても大事。沖縄県では、観光、交通、エネルギー、環境のそれぞれの目的で普及に取り組んでいるが、今後は連携することで社会ニーズに即した施策を講じるべき」と提案する。
 下地教授は、「沖縄県の観光産業の成長に貢献するEV・PHV普及に向けて、県民の意識改革、産学官の連携が不可欠。県民、産学官が一体となった取り組みを実現するために、「沖縄スマートリゾート推進協議会」(仮称)のような組織が必要」と訴えた。

(リポート:レビューマガジン社・下地孝雄)
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