生活・医療・福祉

最新の情報通信技術(ICT)をはじめとした革新的なテクノロジーを駆使して実現される快適で便利な持続可能な社会、スマートシティ、スマートコミュニティの実現に向けて、関連する分野においてそれぞれ進められている研究・開発、実証実験など、実用化に向けたさまざまな取り組みを総合的に発信していきます。
2014/02/22

沖縄県の取組

『沖縄県 環境生活部
環境政策課 副参事
長嶺弘輝 氏

【EV・PHV】<イベント>EV・PHVタウンシンポジウム─in 沖縄─
「沖縄県の取組」

自動車が排出するCO2削減と全国ワースト1の渋滞解消が急務

 EV・PHVの普及について、車両価格の低減による需要喚起や、充電設備の整備による“電欠”への不安払拭といった課題がある。ところが沖縄県では、EV・PHVの普及への課題よりも、沖縄県自体が直面している課題の解決にEV・PHVの普及が必要だという。
 沖縄県の長嶺氏は、同県の課題について明示した。まず、沖縄県では自動車利用の依存度が高く、県内交通手段分担率において自家用車が86%を占める。ちなみに全国平均では66%だから、相当高い数字だ。
 自家用車利用頻度が高いため、温室効果ガスの排出割合は運輸部門が29%と最も高く、しかも自動車からの排出が運輸部門の40%以上を占めている。長嶺氏は、「自動車利用に係る地球温暖化対策の推進が急務」であると訴える。その解決策としてEV・PHVの普及が有効というわけだ。
 沖縄県におけるEV・PHV普及への期待について長嶺氏は、「島しょ県のため移動距離が限られており、沖縄本島は南北に細長く主要幹線道路への充電設備の設置がしやすくEV・PHVに適している」ことを挙げる。
 さらに、「那覇市内の朝夕の通勤ラッシュ時の走行速度が東京都特別区よりも遅く、全国ワースト1」であると指摘する。ちなみに、那覇市内の朝夕の通勤ラッシュ時の自動車の平均走行速度は時速14kmであるという。東京都心は時速18kmであというから、いかに渋滞がひどいかが理解できよう。
 通勤ラッシュ時間帯の那覇市内では、自動車から温室効果ガスが多く排出されるとともに、エネルギー消費効率も悪化するなど、環境と経済活動への悪影響が生じている。こうした環境問題の解決にも、EV・PHVの普及が有効であるという。

パーク&モノレールライド型EVレンタカー・シェアリング

 沖縄県では、これまでEV・PHVの普及や通勤時の渋滞緩和を目的として、さまざまな施策を推進してきた。まず2011年度に実施したモデル事業である、EVレンタカーを利用したパーク&モノレールライド型カーシェアリングが挙げられる。
 これは、出勤時にEVレンタカーで自宅からレンタカーステーションに自走し、そこから送迎バスでモノレール(ゆいレール)の駅へ移動し、モノレールにて那覇市内の職場最寄り駅に移動する。帰宅時は逆のルートとなる。
 なお、ユーザーが勤務中の日中は、EVレンタカーを観光客などに通常のレンタカーとして貸し出すことで利用効率を上げる。この取組はモデル事業として実施したものだが、事業終了後はそのままレンタカーおよびカーシェアリングビジネスとして定着させることで、EV・PHVの普及促進および那覇市内の通勤ラッシュ時の渋滞緩和を進展させることが期待されていたという。
 長嶺氏は、「通勤・帰宅時に那覇市内に流入する自動車を削減することができる。また、観光客は午前中に那覇空港に到着して正午前後からレンタカーの利用を始め、2〜3日後の午後から夕方に返却する。EVレンタカーの稼働も効率的」だと評価する。
 また事業終了後について、「レンタカー事業者の社員の通勤・帰宅にこの仕組みを利用しているケースもある」という。
 このほか、EVバスの導入による公共交通へのモーダルシフトや、試乗会を通じてのEV・PHVの理解・体験による需要創出、観光施設へのEVの導入やEVレンタカーの導入促進支援なども実施され、今後もEV・PHVの普及促進に力を入れていくという。

(リポート:レビューマガジン社・下地孝雄)
本サイト掲載記事の無断転載を禁じます。
Copyright © 2013 - 2024 ReviewMagazine Inc. All rights reserved.