ICT(情報技術)

最新の情報通信技術(ICT)をはじめとした革新的なテクノロジーを駆使して実現される快適で便利な持続可能な社会、スマートシティ、スマートコミュニティの実現に向けて、関連する分野においてそれぞれ進められている研究・開発、実証実験など、実用化に向けたさまざまな取り組みを総合的に発信していきます。
2015/12/09

ドローンとIoTによる強固なつながりが精密農業を発展させる

従来から農業では、産業用無人飛行機(ドローン)が農薬散布などで使用されていた。現在ドローンは、Wi-Fi通信や高精度なカメラ技術により、空撮や測量なども行えるようになってきた。進化するドローンの活用は、農業の発展にどのように貢献するのだろうか。
第11回目となる「SoftBank Technology Forum 2015」からスプリングフィールド株式会社 代表取締役 兼 セキュアドローン協議会 会長 春原久徳氏の講演をリポートする。

IoTによってモノの状態の把握と操作が可能

 あらゆるものがインターネットとつながるIoTによって、主に二つの事柄が実現される。一つ目は、離れた場所にあるモノの状態の把握だ。温度などの環境情報、振動や移動などの動き、場所などの位置、来客数や交通量などの数についてなど、さまざまな状況をリモートで確認できるようになる。二つ目は、離れたモノの操作だ。ドローンの操作にはじまり、電源のオンオフやデータベースの変更までなんでも可能になる。
 ドローンにはホビー用のドローンや業務用のドローンがあり、ヘリコプターのようにプロペラが回転するものと飛行機のように翼が固定されているものがある。回転する翼の種類もさまざまで、ローターが3枚ならばトライコプター、4枚ならばクアッドコプターと呼ばれる。
 講師の春原氏は、ドローンが注目される理由を三つ挙げた。一つ目は、軍事技術からの転用による安定飛行の実現。二つ目は、搭載されるカメラで高画質な画像が撮影できるようになったこと。三つ目は、Wi-Fiを利用したコントロールの実現だ。これらが空を飛ぶセンシング端末としてのドローンの活用範囲の拡大に寄与している。

ドローンの撮影機能の活用で3次元データも作成できる

 ドローンの産業利用としては、スポーツやイベントでの空撮、人が近づけない場所での取材を可能にしたドローンジャーナリズム、商品の運搬やRFIDを使った在庫管理などがある。
 建設や産業機械などの事業を展開しているコマツや、ホームセキュリティ・防犯対策を展開するALSOKなどはすでに活用を始めている。コマツでは、建設現場のICTソリューションとして「スマートコントラクション」を提供している。スマートコントラクションとは、現場に関わるすべてのものをICTで有機的につなぎ、安全で生産性の高いスマートな未来の現場を創造していくソリューションだ。その中でドローンは、建設現場の高精度な3次元データを生成する工程で活用されている。
 ALSOKでは、2015年4月からドローンを活用してメガソーラー発電施設においてパネル点検を行うサービスを実施している。従来、パネルの点検はサーモカメラを利用して一枚ずつ人の手で確認していたが、ドローンの導入後は空撮画像でパネルの不具合箇所を特定できるようになった。

農業の情報化で効率化とコスト削減を実現する

 ドローンは精密農業への活用も期待されている。精密農業とは、農地・農作物の状態を観察し、環境を制御することで、農作物の収量や品質の向上を図る一連の農業管理手法である。農業の情報化は、画像解析やリモートセンシングなどのツールを活用することで実現される。実際には、土壌の状態や作物の健康状態や成長力の測定、農地面積、高低差測量による測量、耕地/水耕作業の効率化と品質の向上、作物や葉色観測で、生育状況の確認と品質の確保などが可能になる。
 現在は、少子化や後継者不足で農業事業の継続が危ぶまれている。その課題を、ドローンを活用した精密農業による農作業の効率化とコスト削減、収量の最大化の実現で解決しようとしている。
 精密農業を実現していくためには、ドローンとさまざまなセンサーが接続されなければならない。それを可能にするのがIoTであり、IoTとのつながりの強化が、精密農業の発展につながっていく。
 国土交通省は、2015年9月に航空法の一部を改正。12月10日から無人航空機の飛行ルールが新たに導入される。改正によって、飛行の許可が必要になる空域と飛行方法の規則が導入された。航空機の航行や地上の人などに危害をおよぼす可能性のある空域で飛行する場合には、事前に国土交通省の許可を受けなければならない。例えば、地表または水面から150m以上の高さの空域や家屋の密集している地域の上空などだ。飛行方法では飛行場所に関わらず、飛行可能な時間は日の出から日没まで、人または物件との間に30m以上の距離を保つなどが定められた。ドローンの使用ルールが策定されたことで、ユーザーが安心して使用できる環境が整った。今後ドローンがより身近になり、サービスの開発も促進されるだろう。

(リポート:レビューマガジン社・松尾好江)
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