ICT(情報技術)

最新の情報通信技術(ICT)をはじめとした革新的なテクノロジーを駆使して実現される快適で便利な持続可能な社会、スマートシティ、スマートコミュニティの実現に向けて、関連する分野においてそれぞれ進められている研究・開発、実証実験など、実用化に向けたさまざまな取り組みを総合的に発信していきます。
2015/02/03

ウェアラブル機器・サービスの普及について

総務省
情報通信国際戦略局長
鈴木 茂樹 氏

ウェアラブル市場はまだ完全には形成されていないため、今後の市場展開を正確に予測することは困難だ。しかし、市場を静観するのではなく、市場シェアを先行して獲得するためにも、“まずやってみる”という姿勢で挑戦することが望ましい。
東京ビッグサイトで開催された「第1回 ウェアラブルEXPO」における総務省の講演をリポートする。

モニタリングサービスの創出に貢献

 ウェアラブル機器には、主に健康データを収集するリストバンド型、スマートフォンの機能を簡略化した腕時計型、通信機能やカメラ機能を備えたメガネ型、ゲームや映像視聴がメインのヘッドマウントディスプレイ型など、いくつか種類がある。共通して、周辺に溶け込む自然なデザインが好まれる傾向にある。
 ウェアラブルはB2BとB2Cで活用できるが、B2Cは多彩なデータをモニタリングするサービスが多く、リストバンド型の端末が利用される傾向がある。血圧などの計測データをスマートフォンやPCに転送して、自分の健康状態を把握するような使い方だ。
 B2B向けのサービスでは、従業員の行動をカードで監視・管理する日立製作所の「ビジネス顕微鏡」などが提供されている。このほかにも、軍事や警備などの分野でウェアラブル機器が普及していく可能性がある。

意識させないサイズと重量が必須

 ウェアラブル機器の普及にあたって課題もある。例えば、端末の形状、サイズ、重量などに関して、ユーザーが意識せずに身に付けられるかどうかということだ。ユーザーに意識させないサイズや重量が必要なのだ。
 バッテリーの稼働時間も大きな課題だ。現在提供されている端末の駆動時間は、常時利用では短すぎる。例えば、腕時計型端末であれば、通常の腕時計と同様にバッテリーが1年以上持つことが望ましい。
 アプリも不足している。コンシューマー分野では、ウェアラブル機器のようなガジェットは血圧などのデータを見るだけでは不十分であり、面白いアプリがなければ流行らない。総務省は、オープンな環境でアプリを開発できる環境を整備していきたいとしている。

世論を気にするよりまずやってみる

 ウェアラブル機器はメディアで話題にのぼることが多いものの、現段階では普及しているとは言えない。しかし、現在の時計型やメガネ型だけでなく、あらゆるモノにセンサーが搭載される時代が来る可能性がある。例えば、今後は、洋服のタグやネクタイピン、靴などにセンサーが搭載されるかもしれない。
 ITツールやサービスを展開する際、米企業は“まずやってみる”という姿勢で取り組むことが多い。やってみた結果、世論や裁判所がノーと言えば直すビジネススタイルだ。ウェアラブルの分野でも米企業は同様であり、日本企業もこれを見習った方がよいと総務省は提案する。まずは世論や企業姿勢を考慮するのではなく、収益を上げるビジネスモデルづくりに注力し、問題が出た後で解決すればよい。標準的なサービスなどとの互換性も後から考えるとよいだろう。
 現在、ウェアラブルの分野は互換性や通信規格などの標準仕様は策定されていない段階だ。現段階においてウェアラブル市場でシェアを獲得できれば、その製品やサービスの仕様をデファクトにできる可能性がある。

(リポート:レビューマガジン社・笠間洋介)
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