ICT(情報技術)

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2014/02/22

安価で導入・利用しやすい“どこでもスイッチ”で意思をより正確に把握する

『OAKプログラム』実践事例研究紹介
長野県 長野県立稲荷山養護学校
青木高光 先生

ICTを活用して障害児の学習・生活支援を行うプロジェクト
「DO-IT School」の成果報告会リポート
安価で導入・利用しやすい“どこでもスイッチ”で意思をより正確に把握する

 長野県立稲荷山養護学校は、知的障害のある児童生徒と、知的障害のある肢体不自由な児童生徒が同じカリキュラムで学習する全国でも数少ない知肢併置校だ。

OAKプログラムを活用

 DO-IT SchoolのOAKプログラムでは、マイクロソフトのモーションコントローラー、「Kinect」(キネクト)と、Kinectに対応するスイッチ操作ソフトウェア「OAK」を活用して、養護学校の児童生徒の学習や生活を支援することが目的であるが、稲荷山養護学校の青木先生はOAKプログラムを活用することで、肢体不自由児童生徒の表出手段や余暇利用の選択肢を広げる目的でプログラムに応募、参加したという。
 青木先生は、数名の児童生徒の支援に活用しているが、脳性麻痺を患う中学部3年の生徒を紹介した。実は同校でのこの生徒への指導・支援は、TBSのドキュメンタりー番組『夢の扉+』で「どこでもスイッチで想いを伝えてほしい」というタイトルで2013年7月に放送されている。そして、この“どこでもスイッチ”がOAK(とKinectを組み合わせたシステム)である。東京大学先端科学技術研究センターの巖淵守准教授が開発した。
 生徒の意思を把握することは非常に困難であるが、家族は明確な意思表示があるという。青木先生は、「確かに、一問一答のときはコミュニケーションが取れているように見えるが、本人が本当に思っていること、考えていることは何なのかはわからない。質問する際も、質問自体に偏りがあったり、選択肢が十分でなかったりして、本人の本当の意思を把握できていないのではないか」と話す。
 そこで、スイッチを利用した意思の把握が検討されることになるが、従来は動かせる箇所や稼働範囲に応じた特別なスイッチを利用していた。しかし、こうしたスイッチは高価で利用も容易ではないという課題がある。
 Kinectセンサーを使うOAKは、まぶたや口の動きでスイッチを操作できる「フェイススイッチ」や、指を伸ばすなどのわずかな動きでスイッチを操作できる「エアースイッチ」を安価に導入でき、簡単な設定で利用できるという。

OAKの利点について

 OAKの利点について青木先生は、「視線を向けるだけでスイッチを操作できる。自然な動き、わずかな動きでOAKが反応するため、児童生徒の身体の動きに負担をかけない。ただし、スイッチ操作を確実に、活用を持続させるには、児童生徒の得意な動きを探ること、児童生徒の興味と理解を得ることが大切」とアドバイスを語った。

(リポート:レビューマガジン社・下地孝雄)
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