エネルギー・環境

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2014/07/14

災害に強く地球にやさしい低炭素な街を実現するグリーン・コミュニティ田子西

右から
国際航業株式会社 東日本事業本部
東北支社 東北グリーン・コミュニティ推進室
室長 加藤清也 氏

国際航業株式会社 エネルギー事業推進部
エネルギーマネジメントグループ
チーフ 髙村浩之 氏

株式会社北洲 営業課
課長 冨山 徹 氏

国際航業の主導のもと、東日本大震災の津波の到達ラインから2km離れた仙台市田子西地区において、グリーン・コミュニティ事業が進められている。その特長は、太陽光発電などのハード面での取り組みに加えて、人と人とのつながりによって災害時に助け合うコミュニティを形成するなど、ソフト面にも注力している点にある。

被災者が暮らすための住宅が不足

 東日本大震災によって甚大な被害を受けた宮城県仙台市。海の近くの地域は、今でも建物の建設が規制されている場所が多く、被災者が暮らすための住宅が不足している状況にある。また、震災直後は特に電力が全面的に利用できなくなった地域も多いため、電力供給が停止した場合でも独立したエネルギーを確保できる取り組みも求められている。
 そこで仙台市は2012年、災害に強く環境に配慮された街づくりを推進するための「仙台市エコモデルタウンプロジェクト推進事業」を、津波の到達ラインから2km離れた仙台市田子西地区にて実施することを決定。同地区において業務代行者として土地区画整理事業に取り組んできた国際航業は、NTT東日本やNTTファシリティーズと一般社団法人仙台グリーン・コミュニティ推進協議会を設立し、上記補助事業の採択を受けて先進的なエネルギーマネジメントシステムの導入を推進している。

環境に配慮された自立型エネルギーを確保

 本事業は、環境に優しく災害に対する安全性も兼ね備えた防災・環境都市「グリーン・コミュニティ田子西」を実現するための街づくりとなる。施工面積は16.32ヘクタール。176世帯が入る市営住宅や商業ゾーン、16戸の戸建住宅が並ぶスマートヴィレッジ街区など、区画が分かれている。市営住宅は2014年3月に完成したばかりだが、現時点で170世帯以上が契約済みだ。スマートヴィレッジの戸建住宅は昨年の5月でほぼ完成し、現在は入居者が実際に生活している。
 グリーン・コミュニティ田子西は、長期にわたって電力などのインフラが停止した場合でも、環境に配慮された自立型エネルギーを確保して最低限の暮らしを維持するなど、災害に強く地球にやさしい低炭素な街を実現することが目標となる。そのために、“エネルギー消費抑制”“快適に暮らせる仕組み”“自然との融合”“災害に強い都市基盤”の4点の街づくりコンセプトが掲げられている。
 エネルギー消費抑制については、太陽光などの再生可能エネルギーの導入やエネルギーの見える化による省エネの促進などを指す。グリーン・コミュニティ田子西では、スマートヴィレッジの各住宅や市営住宅の各居住部屋の消費電力をエネルギーマネジメントシステムで管理している。電力会社から供給される電力に加え、太陽電池や蓄電池、エネファーム、電気自動車用の蓄電池などを活用し、環境に優しい電力を生み出す。各住宅にはタブレットが貸与され、消費電力量の推移などをタブレットで確認でき、省エネの具体的な効果なども分かるのだ。
 快適に暮らせる仕組みとしては、防災体制や快適な生活などについて住民同士で協議するほか、共同で管理することでコミュニケーションの促進を図る取り組みを指す。国際航業の加藤清也氏は、「グリーン・コミュニティ田子西では、被災して別の地域から来られた方や従来から田子西に住んでいた方など、さまざまな人びとが集まります。異なる地域で生まれ育った方が同じエリアで快適に過ごせるように、コミュニティ活動に注力しています」と説明する。
 自然との融合は、スマートヴィレッジにおける自然環境に配慮した空間デザインを取り入れるほか、農地や自然との触れ合い活動を促進していくことなどを意図している。災害に強い都市基盤に関しては、特定のインフラがストップした際に他のエネルギーを利用することを想定しており、オールガスやオール電化を採用せずに複数のエネルギーを活用する“エネルギーのベストミックス”の取り組みを指す。地域一帯での防災対策の実施も検討しているという。

共有広場の維持管理や共同利用を通じてコミュニティを形成

 スマートヴィレッジ街区は、コンセプトを前面に押し出した地域コミュニティを生み出すデザインを採用している。例えば、住宅間に小道を配置して敷地の境界とし、生垣などの境界を極力設けずに見通しをよくしている。これにより、隣に誰が住んでいるかが分からないような状態をなくしつつ、防犯面でも効果が期待できる。
 また、スマートヴィレッジ街区の中央部には街区の住民が自由に使える共有広場が配置されているほか、各住宅の共有広場側には広場を眺められるように大きな窓が設置されている。国際航業の髙村氏は、「共有広場で遊んでいる大勢の子供達をリビングから眺めるなど、居住者同士の空気を感じながら生活することができます」と話す。
 今年の4月には、スマートヴィレッジ街区の住民による共有会が設立され、防災対策や共有広場の活用方法など、さまざまな取り組みの検討が行われるという。髙村氏は、「太陽光発電など、ハード面での取り組みだけ行われる都市型環境事業は少なくありません。しかし災害の状況下では、ハード面での電力確保に加えて、人と人とのつながりによって助け合う共助の考え方も求められます。万が一の際に助け合う土壌づくりとして、コミュニティを形成することが重要になります」と説明する。

蓄電池の充放電量を自動的に最適化

 スマートヴィレッジ街区の各住宅にはHEMS(Home Energy Management System)が導入されており、電力会社から供給される電力、太陽光、エネファーム、定置型蓄電池、電気自動車用蓄電池の5種類の電源を活用し、エネルギーの自給率が高い低炭素なスマートハウスを実現した。
 さらに、スマートハウスから取得するライフログをクラウド上に蓄積し、エネルギー利用のアルゴリズムを学習することも可能だ。例えば、天気予報や各戸の消費電力量の予測値に基づいて、蓄電池の充放電量を住宅ごとに自動で最適化できる。
 また、長期停電時にはエネファームなどは自動的に停止してしまうが、HEMSを操作することでエネファームや太陽光の発電を停電時に復帰できるようになる。災害時でも、最低限の電力を確保できるのだ。
 市営住宅街区では、スマートヴィレッジ街区と同様に各家庭の消費電力量の見える化を実現している。さらに、昼間などの電力需要が逼迫する時間帯に省エネに協力した世帯には、地域で使えるポイントを付与することなどを検討しているという。
 市営住宅街区は、電力会社からの低コストの高圧一括受電で電力を確保しており、太陽光発電や蓄電池も併せて活用している。電力会社からの電力供給が長期にわたって途絶える場合には、入居者が避難する集会所に蓄電池や太陽光の電力を集中して供給し、避難者の集会所での暮らしをサポートする。

仙台市長からも期待が寄せられる

 スマートヴィレッジ街区の住宅は、電気自動車付きが2棟、その他14棟は定置型蓄電池付きとなる。16戸の住宅を1社の住宅メーカーがすべて手掛けるのではなく、地場住宅メーカーの北洲、西洋ハウジング、住友林業、積水ハウスなど計7社が1〜4戸の住宅を建築した。住宅メーカーの中で初めに同事業に参画し、参加企業の中で最も多い4戸の住宅を建設したのが北洲となる。
 同社の冨山 徹氏は、「当社は、注文住宅を手掛けており、今回のような完成住宅を取り扱うことはほとんどなかったのですが、災害に強く住民の皆さまの交流も盛んなスマートヴィレッジ街区のコンセプトに地場企業として賛同し、率先して挑戦したいと考えました」と話す。
 加藤氏は、「仙台市からも大きな期待を寄せられており、特に奥山恵美子市長には率先して支援していただいています。総務省や仙台市、住宅メーカー、そして住民の方々の協力がなければ事業は成功しません。本事業はコミュニティを形成するという独特の狙いがあるため、事業の成果が明確に分かるのは10年後くらいになるかもしれませんが、今後も仙台復興のモデルづくりに生かしていきたいですね」と語った。

(リポート:レビューマガジン社・笠間洋介)
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