エネルギー・環境

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2014/02/22

パネルディスカッション:島しょ地域におけるEV・PHVの可能性と環境に配慮した観光の取り組み

■ パネリスト
ハワイ大学ハワイ自然エネルギー研究所(HNEI)スペシャリスト レオン・ルース 氏

沖縄県EV普及促進協議会 白石武博 氏

宮古島市 大金修一氏

沖縄県 長嶺弘輝氏

経済産業省 丸山智久氏

「パネルディスカッション:島しょ地域におけるEV・PHVの可能性と環境に配慮した観光の取り組み」

普及の壁はガソリン車との価格差

 パネルディスカッションの最初のテーマとなったのは、EV・PHV普及の課題だった。まず挙げられたのは、ガソリン車との価格差だ。この課題について経済産業省の丸山氏は、自身の講演でも紹介した補助金について紹介。車両購入時に消費者に交付される補助金に加えて、自動車メーカーが企業努力で価格低減に取り組むインセンティブとなる補助金について仕組みを説明。EVとガソリン車の価格差を、2016年度までに50万円まで低減することを目指している。
 日本には軽自動車という経済的かつ低価格な自動車が普及しており、消費者が負担する維持費をEVでアピールするならば軽自動車並みのコストで維持できることも必要なのではないか。こうした問いかけに対して沖縄県EV普及促進協議会 白石氏は、「現状のEVは高価だが中古車ならば値下がりして購入しやすい。具体的には、業者の取引価格で120万円程度」と説明。確かにEVの価格としては魅力的な数字だが、ガソリン車の中古価格と比較するとやはり高い。
 販売価格だけを見るのではなく、トータルコストで捕らえるべきだと訴える。白石氏は、「EVを通勤など日常的に利用する場合、1日に100km走ったとしても、帰宅後に家庭の夜間電力で充電して翌日また利用する。こうした使い方をすると、燃料費はガソリン車と比較して格段に安い」と説明する。つまり、車両価格が幾分高くても、利用し続ければトータルでEVの方が安くなるという理屈だ。
 こうしたメッセージを自動車メーカーや販売店がアピールしても、消費者は聞いてくれない。行政が正式なコメントとしてアピールすることも、消費者の理解を得るには重要だろう。

価格以外のメリット “走る電源”をアピール

 価格以外のインセンティブも効果があると提案する。白石氏は、「例えば通勤時間帯にEV専用レーンを設置したり、バスレーン(沖縄県では朝夕の通勤時間帯はバスレーンの通行が禁止されている)の通行を許可したりするなど、コスト以外の魅力があるといい」と話す。
 こうした優先走行や駐車場が無料で利用できるなどのアイデアは魅力的ではあるが、沖縄県の長嶺氏は、「実際に実施するのはEVだけを優遇するのは納税者や消費者の理解を得るのは容易ではないだろうし、EVの台数が増えると収拾がつかなくなる恐れもある」と難しさを説明する。
 宮古島市の大金氏は、「沖縄県は中古車の価格が安いため、価格だけでEVを普及させるのは難しい。価格以外の魅力が必要。例えば、宮古島は(低地な地形のため)台風の被害が大きく停電も多い。その際にEVを電源に使えることをアピールすれば関心を持ってもらえるのではないか」と提案する。
 さらに大金氏は、「ガソリンを始め火力発電所の燃料コストが高騰を続ける中、再生可能エネルギーの活用を進展させる必要がある。しかし、沖縄県の太陽光発電は接続限界に達している。その可決策の1つが、大型蓄電池の設置による接続可能量の拡大だが、充電器に接続されたEVのバッテリーを活用したエネルギーマネジメントも可能ではないか」と続ける。

“電欠”の不安払拭がEV普及のカギ

 EVへの需要が高まっているハワイでの事情についてハワイ大学のレオン・ルース氏は、「ハワイの住民は環境への関心がとても高く、EVへの関心も高い。補助金もあるため購入しやすくなってきている。しかし、レンタカーへの普及も遅いのが実情。価格の問題もあるが、最も大きな課題は運転者の(電欠への)不安だ。そのため、まずは充電設備の整備を進めなければならない」と説明。日本と変わらない事情であることがわかった。

 白石氏も、「レンタカーの場合、利用者は沖縄に遊びに来ているので、EVの電力メーター見てヒヤヒヤしたくないもの。ガソリン車ならば、2泊3日で1度も給油することなくガス欠を気にせず観光を楽しめる。電気はどこにでも通っているのだから、携帯電話を充電する感覚で、どこでも充電できる充電設備の整備が必要。こうした利用環境にならないとEVを利用しようとは思わないのではないか」と続ける。
 充電設備は徐々に整備が進んでいるが、どこにあるのかわからないという問題も指摘された。この問題について経済産業省の丸山氏は、「充電設備の位置情報の提供ということになるが、こちらは企業がビジネスとして推進するべき。政府や自治体は「どこに充電設備を設置するか」を担当する」と説明する。

電欠が不安でバッテリーを使いきれないムダ

 充電設備の整備については道路を走行するEVの台数に応じた設置個所、設置数が必要になるだろうが、現状においてはEVが普及しておらず充電設備の稼働率も低いのが実情だ。また、EVユーザーの心理的な問題が原因で、EVの利用方法が硬直化しているという。
 経済産業省の丸山氏は、「充電設備がある場所と大体の距離がわかっていたら、バッテリーが満充電でなくても不安にならない。次の充電設備まで走れればよい電力があればいいという使い方ができるようになれば、充電時間も短くなるし、バッテリーの電力残量が少なくても不安にならない」と指摘する。
 例えば、東京電力が横浜市のある地区で行った調査では、充電設備を増設した後にEVの移動範囲が広がったことが確認された。
 移動範囲が広がっただけではなく、バッテリーの電力残量にも大きな変化が発生した。増設前はバッテリー残量が常に50%以上という使われ方をしていたが、増設後は50%以下まで電力を使用している。つまり、充電設備までの距離と場所がわかっていれば、ユーザーの心理的不安が取り除かれ、充電回数も減るというわけだ。こうした傾向の把握も、充電設備の効率的な整備に欠かせないだろう。

EV普及のシナリオはPHEVの販売が入口

 EV・PHVは、中長期的な視点で捕らえれば徐々にガソリン車と置き換わりながら普及が進んでいくことだろう。しかし、EV・PHVが道路を走る自動車の主流になる日は当面なさそうだ。
 ただし、自動車メーカーがPHEV(EVに発電用エンジン(レンジエクステンダー)を搭載した自動車)の販売に力を入れれば、充電設備整備の問題も解消され、自動車のEV化が進むのではないだろうか。また、PHEVの販売拡大によって、EVの主要部品のコストを下げることもできよう。そして、充電設備の整備が進み部品のコストダウンが進んだところで、EVへと軸足を移すのだ。
 このシナリオが現実的だと思うが、モーター、バッテリー、エンジンを搭載するPHEVの生産コストを抑えて、車両価格を下げるという企業努力が前提となる。

(リポート:レビューマガジン社・下地孝雄)
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